早口スタッツ解説━━シュートの効率に関係するスタッツ
こんにちは、らんそうるい(@rnsr0371)です。この記事では、シュートの効率に関連するスタッツを解説します。Bリーグ公式HPでもシュートの効率を表すスタッツが充実してきたのですが、解説がさっぱり目なので、この記事ではBリーグ公式の解説を補完することを目指します。
はじめに、この記事で紹介するスタッツの一覧を示します。
略称 | 意味 | 特徴 |
2FG% | 2点シュート成功率 | 2点シュートのみに注目している点 |
3FG% | 3点シュート成功率 | 3点シュートのみに注目している点 |
FG% | 2点シュートと3点シュートをまとめてフィールドゴールとした、フィールドゴール成功率 | 2点・3点シュートの両方に注目している点 |
eFG% | ・3点シュートの価値を考慮した、フィールドゴール成功率 ・4 Factors の一つ ・Effective Field Goal % | FG%の特徴に加えて、3点シュートの価値を取り入れている点 |
TS% | ・2点シュート・3点シュート・フリースローを考慮した、シュートの効率 ・True Shooting % | ・2点・3点シュートに加えて、フリースローも考慮している点 ・それぞれのシュートに価値を設定している点 |
2FG%, 3FG%, FG%
これらのスタッツはベーシックスタッツと一緒に公開されていることが多く、馴染みのある方もおられると思います。
略称 | 意味 | 特徴 |
2FG% | 2点シュート成功率 | 2点シュートのみに注目している点 |
3FG% | 3点シュート成功率 | 3点シュートのみに注目している点 |
FG% | 2点シュートと3点シュートをまとめてフィールドゴールとした、フィールドゴール成功率 | 2点・3点シュートの両方に注目している点 |
2点シュートと3点シュートのことをまとめてフィールドゴール(FG)と呼びます。フィールドゴールと対比されるのはフリースローです。これらの違いは、フィールドゴールは相手に妨害を受けることもあるが、フリースローは文字通り「フリー(妨害を受けない)」であることです。
フィールドゴールの切り口として、2点シュート・3点シュートの区別について述べます。
プレースタイルとFG%
バスケットボールではフィールドゴールを試投した位置によって、成功時の得点が変わります。これが2点シュートと3点シュートの区別です。
3点シュートは2点シュートよりも距離が遠いため、成功率が低くなることが多いです。加えて、選手のプレースタイルによってフィールドゴールの構成比(2点シュートと3点シュートを何本ずつ放ち、何本成功させるか)は異なります。たとえば、宇都直輝選手と富樫勇樹選手では、富樫選手の方が3点シュートが多いので、富樫選手のFG%が宇都選手よりも低くなっているシーズンが多いです。
フィールドゴールの構成比の違いがFG%に与える影響を緩和して、選手をフェアに比較が行えるようにしたいというニーズあったのだと想像しているのですが、2点シュートと3点シュートをまとめて評価するスタッツが考案されています。その代表例がeFG%です。
こぼれ話:相手による妨害の有無とシュート効率
フィールドゴールの中でも、相手に妨害されたシュートのことを「コンテステッド」、そうでないシュートを「アンコンテステッド」と細分化することもあります。
「相手による妨害の有無」は、記録者が判断するため、容易にラベル付けできるわけでありません。この判断は、機械学習モデルによって、自動化・統一化が進められていくと思っています(もう始まっているかもしれませんが)。
コンテステッドなシュートの方が、アンコンテステッドなシュートよりも成功率が低いので、「(フィールドゴールの内)コンテストされたシュートの割合」を調整したシュートの効率を評価する指標が今後考案されるかもしれません。
コンテストされた割合を考慮したシュート効率は、コンテストされるかどうかがチームの攻撃戦術やチームメイトによって決まるのだとすれば、チームの違いを超えて、選手のシュート効率のフェアな比較を可能にするため、重用される可能性があります。
eFG%
略称 | 意味 | 特徴 |
eFG% | ・3点シュートの価値を考慮した、フィールドゴール成功率 ・4 Factors の一つ ・Effective Field Goal % | FG%の特徴に加えて、3点シュートを重要視している点 |
eFG%はBリーグ公式のスタッツ用語解説によると
3Pシュートに比重(1.5倍)をかけて補正したフィルドゴール成功率
https://www.bleague.jp/glossary/
です。
この比重1.5ですが、これは2点シュートに比べて3点シュートは成功時に1.5倍の点が記録されるため、採用されています。
定義式の解説
スタッツ用語解説の定義式に注目すると、
eFG%=フィールドゴールの成功数+(0.5×3Pシュート成功数)/フィールドゴール試投数
とあります。フィールドゴールの成功数は2点シュートの成功数+3点シュートの成功数なので、
eFG%={(2点シュートの成功数+3点シュートの成功数)+(0.5×3点シュートの成功数)}/フィールドゴール試投数
3点シュートの成功数をくくり出して、
eFG%={2点シュートの成功数+(1+0.5)×3点シュートの成功数}/フィールドゴール試投数
=(2点シュートの成功数+1.5×3点シュートの成功数)/フィールドゴール試投数
となり、確かに3点シュートの成功が2点シュートの成功に比べて1.5倍の重みがつけられているのが確認できました。
TS%
略称 | 意味 | 特徴 |
TS% | ・2点シュート・3点シュート・フリースローを考慮した、シュートの効率 ・True Shooting % | ・2点・3点シュートに加えて、フリースローも考慮している点 ・それぞれのシュートに価値を設定している点 |
TS%はBリーグ公式HPのスタッツ用語解説には「シュート効率」としか書かれていません。また定義式も、
TS%=得点数/2×(フィールドゴール試投数+0.44×フリースロー試投数)
と書かれており、なぜこれでシュート効率を意味するのか、直感的にはわかりにくいと思います。
結論、eFG%とTS%との違いは「eFG%がフィールドゴールだけを扱っているのに対し、TS%がフリースローも考慮している点」であり、フィールドゴールとフリースローが考慮できれば、シュート全体をカバーしているので「シュートの効率」とだけ説明されているのだと思います。
TS%の理論的な背景
TS%の理論上の背景の解説として『スルーしがちな「TS%の計算式」を丁寧に解説する』がとても分かりやすいので、ぜひご覧ください。私も勉強させていただきました。
分母の解説:2×(フィールドゴール試投数+0.44×フリースロー試投数)
TS%の分母の「フィールドゴール試投数+0.44×フリースロー試投数」はTrue Shooting Attemptと呼ばれており、ポゼッションを終わらせるシュートの試投数を計算したものです。もっと分かりやすく説明すると「リバウンドの争奪戦が発生するシュートの数」≒「フィールドゴール試投数」というイメージです。
フィールドゴールは1本放てばそれでポゼッションが一区切りです。
フリースローは1~3本与えられますが、ポゼッションの終わりはどう考えればいいでしょうか? TS%では、フリースロー試投全部の内「バスケットカウントのフリースロー・2点シュートへのシューティングファウルで獲得したフリースローの2本目・3点シュートへのシューティングファウルで獲得したフリースローの3本目 を合計したもの」の割合が、約0.44であるため、0.44をフリースロー試投数にかけて、リバウンドの争奪戦が発生するフリースローの数を計算しています。イメージとしては、0.44はフリースロー試投数をフィールドゴール試投数に変換する役割があります。
次にTrue Shooting Attemptにかけられている2について説明します。これは「2点」という意味です。
まとめます。TS%の分母は、意図としては『2点×「フィールドゴール試投数」』です。これは、全てのシュートが2点である考え、それらをすべて成功させた場合に得られる得点です。
TS%の意味・性質
「2点シュートを全て成功させた得点」を基準とし、実際の得点数との比をとることで、シュートの効率を評価しようというのがTS%です。
ちなみに、2点シュートしか放たない選手では、TS%と2FG%は同じ挙動をします。2点シュートと3点シュートしか放たない選手なら、TS%とeFG%は同じ挙動をします。美しいですね。
まとめ
以上、シュートの効率に関するスタッツの解説でした。もし間違いなどございましたら、教えていただけると幸いです。ご感想もお待ちしています。
参考文献は、小谷究・木村和希『データで強くなる!! バスケットボール最強の確率』(日東書院, 2022)ですが、このブログ記事に間違いが含まれていたら、それは参考文献のせいではなく、らんそうるいの理解力の無さのためです。